鼎談「セクショナリズムから遠く離れて」
2016年1月6日 於:秋葉原 DMM.make AKIBA
根津――根津孝太(znug design 代表)
郡司――郡司典夫(中央公論新社学芸局)
久米――久米泰弘(書籍編集者)
第8回 「キャラクター」について
久米――本のカバーに著者の写真を使うのは、あえてこれまでずっとやってこなかったんだけど、この本の場合は根津さんの写真を使うのもよいかなと思って、思案中。
根津――恥ずかしいよ(笑)。
久米――著者の写真が表紙になるのって、タレント本でもないのに、とくに翻訳もののビジネス書にはすごく多いんです。それは100年後も、こういう著者が書いた本だという歳をとらないキャラクターですよね。でも根津さんのこの表情は耐久性があるような気がする。どうですか?
郡司――いいんじゃないですか。
久米――だいたい根津さんの本をつくろうと、この人に賭けようと思い切れたのは、根津さんのこのキャラクターがすごく大きかった。世間とかメディアをデザインするのには、書籍はすごくいい装置なので、根津さんにはどんどん矢面に立ってもらって、そのキャラを売り出したいと思っているんですね。
郡司――ああ、それはいいですね。
久米――根津孝太=タレント化計画。
根津――やっぱりなんか恥ずかしいな(笑)。表情ということで言えば、いつもニコニコしていると、相手からポジティヴな反応を引き出しやすくなるんです。あるがままにニコニコできるのは悟った人なんでしょうけど、ぼくはどこか戦略性をもってニコニコしているのかもしれない。かと言って、ものすごく意識しているわけでもないんだけど。
郡司――「善意」と「戦略性」はこの本のキーワードですからね。両方ないとダメだということですね。
根津――誰かに「クリエイティヴ・コミュニケーション」を試みるとき、相手に対する「善意」と「戦略性」がそろっていると、言葉が明快になっていくんです。自分ひとりでは考えがモヤモヤとして、カリっとした言葉にならないことも多いでしょう。でも、人と話をして根気強く掘っていくと、お互いに自分の考えがハッキリしてきて、相手からのよい影響を受けて、考えが更新されたり再編されたりして、育っていくんですね。
久米――根津さんのキャラは、おたがいの言葉をカリッとさせる。
郡司――そうですね。この本自体が、カバーからして根津さんのキャラクターを纏っていることは、とても重要だと思います。