鼎談「セクショナリズムから遠く離れて」

 

2016年1月6日 於:秋葉原 DMM.make AKIBA

 

根津――根津孝太(znug design 代表)

郡司――郡司典夫(中央公論新社学芸局)

久米――久米泰弘(書籍編集者)

 

 

 

第1回 本が出るまえから続編の話

 

 

根津――第1稿を郡司さんに読んでもらったんだよね。

 

久米――うん、ここまでの話は結構、評判よかったんだよ。

 

郡司――とてもおもしろく読ませていただきました。

 

根津――よかったー!

 

久米――ずっと根津さんと里美さんと、ここまで3人でやってきたから、内心不安だったんだけど。

 

郡司――あと、まだこの先、話すことはありますか?

 

根津――何を採用し不採用とするかは久米さんに任せますが、構成案に示されていることは、すべて話していこうと思っています。つくり手と使い手の境をなくしていくデザインの話は、「クリエイティヴ・コミュニケーション」と紐付けて最後までするつもりです。いかがですか?

 

郡司――ここまででも十分いろんな話題があるので、もう少しもったいぶって展開してもいいんじゃないかと 思いました。とにかく前へ前へと急ぐより、落ち着いてじっくり読みたい読者もいる。しかもそんなに厚い本じゃなくていい。と考えると、材料は十分揃っているかなと、今度はそれらを印象的に構成していくことが重要ではないかと思ったりもします。

 

根津――なるほど。ぼくはとにかく最後まで話して、構成の段階で久米さんに調整してもらう形で進めていきたいと思っています。

 

郡司――もちろんそれでもいいし、第2弾もあり得ると思うんですね。デザインとコミュニケーションの話は、永遠に続く問題なので。

 

久米――デザインの本はデザインのコーナー、コミュニケーションの本はコミュニケーションのコーナー、山ほどあるでしょう。ただそれをビジネス書として一致させた本はあまりないので、まずは根津さんの話は最後まで聞いて、あとは1冊でいいのか、続編を考えるかですね。

 

根津――最初に久米さんへお願いしたのは、ハウツー本にしたくないということです。「デザイン・シンキング」などに関する書籍は、すでにすばらしいものがたくさん出ていますし。

 

久米――世間的に「デザイン」と言っても、わかってるのかどうかわからないような話でしょう。そこを根津さんはきちんと説明したうえで、コミュニケーションをどうとるかという問題を、デザイナーとしての体験をとおして具体化している。それがハウツー本の多くは、共通の物差しを抜きにして問題を一般化してしまうから、精神論に走りやすいんですね。そうではなくて、コミュニケーションというのは、デザインされてはじめてクリエイティヴな意味を持つ、具体的な意図を持った営みなんだという視点は、結構いま求められていると思います。

 

郡司――コミュニケーションというのは、個人のものではなくて、チームのものだと根津さんは考えている。たとえば、個性などというものは、自分のためではなく、チームのために必要なんだという考え方は、とても新鮮でした。

 

根津――ひとりでやっていたら、絶対に個人を超えてはいかないんです。でも、いま4人いたら、掛ける4じゃないんです。それは10にも20にもなる。そこを言いたいんです。

 

郡司――そのように、やっぱり読者が読んで役に立つ、というところは外せないと思うんですね。ハウツー本ではないけど、そういう要素は織り込んでもいいと思います。

 

根津――わかります、ハウツー的な部分ですよね。ただ、そもそもぼくの体験から論理を導き出しているので、最初に教えみたいなものがあるわけじゃないんですよね。

 

郡司――最初に出てくるトヨタ〈i-unit〉の開発過程での失敗談とかは、ハウツーというより、お話として印象的です。

 

根津――ああいう経験は、誰しも多かれ少なかれしていると思うんです。そこから学べることが結果ハウツー的であることは否めません。ただ、それを最初から言ってしまうのではなく、読者に感じてもらえたらいいなと思っています。

 

久米――ビジネス書の王道は「人間関係」なんです。いかにして人間関係を良好に築くかをめぐって、いろんなテーマが設定されている。今回はデザインとコミュニケーションがテーマですけど、その大元は根津さんの体験ですからね。そこから導き出された事柄が、よりよい人間関係をつくり活性化する道具になるということは、結果論であって、最初からハウツーを目指したものではない。ペニー・ガム方式ではないんです。 ただ、ビジネス書はあくまで実用書なので、そこは心がけて構成するつもりです。

 

 

> 第2回 本の実用性

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